旅には、思いがけない展開がつきもの

今回のドイツ旅行で訪れたミュンヘンは、音楽鑑賞と美術館巡りを目的に計画した。9月末、どのホテルも高くて変だなと思っていたら、世界最大のビール祭り「オクトーバーフェスト」にもろ被っている。宿泊費節約のため他の都市に行くか迷ったものの、「こんな偶然はなかなかない。むしろマス(2Lジョッキ)にチャレンジするか!」と意気込んでいた。
しかし、出発1週間前から業務繁忙が続いたからか体調を崩し、胃腸がおかしい。結局、体調不良のまま渡欧することになり、「ビールもソーセージも楽しめない」という事態だった。用意していた二日酔いの薬は使用せず、胃腸薬をポーチに日本を出発。
当日朝まで会場に行くか悩んでいたが、それでもせっかく来たのだからと、会場を歩いてみることにした。
ビールも飲まず、ソーセージも食べずに歩くオクトーバーフェスト会場

オクトーバーフェストと聞いて思い浮かべるのは、ビールジョッキを片手に陽気に歌い騒ぐ人々の姿だろう。でも、実際に会場を歩いてみると、それだけではない多彩な表情が見えてくる。
まず、空港からミュンヘン東駅に到着し目に飛び込んできたのは、民族衣装を着た地元の人々。
女性たちは「ディアンドル」と呼ばれるドレス、男性たちは革のショートパンツ「レーダーホーゼン」に身を包み、右手には瓶ビールを持っている。よくよく観察すると、丈・柄・装飾が違い、似ているようで違う。老若男女に関わらず着ていて、まるで異世界に迷い込んだような、ちょっと浮き立つような景色だった。バイエルンに来たと実感した。

会場はとにかく広い。日本のオクトーバーフェストとは全く異なる圧倒的規模感に驚いた。
敷地内には巨大なテントが並ぶ。どこからともなく歓声が聞こえてくる。午前11時、テントの中はすでに盛り上がっている。夜になるとどうなるのだろう。圧倒的熱気にテントの奥まで入り込む体力・気力がなく、退散する。
テントの外には屋台もあり、スイーツや軽食、スナックの販売がある。会場を歩いていると、家族連れで来ている地元の人たちや、楽しそうにおしゃべりしているグループとすれ違う。平日の昼間でも、こんなに人が来ているのかと驚く。

また、オクトーバフストは遊園地でもある。移動遊園地のコーナーには観覧車やメリーゴーランドがあり、子どもたちに混じって大人も楽しんでいる。ビールを飲んで、気持ち悪くならないのだろうか。
「お祭り」って、こんなにいろんな人がいて、それぞれの楽しみ方があるんだな。飲めなくても、食べられなくても、こうしてその空気に身を置くだけで、ちょっと元気をもらった。
うまくいかない旅

正直に言えば大変悔しかった。日本未上陸の本場のビールを味わうことも、ドイツのソーセージを頬張ることも、今回の旅の楽しみにしていたことだった。でも、
一人、歩きながら感じたこと。たとえば、どんなに大きなイベントでも、自分のペースで、無理せず味わっていいんだという安心感。
旅先では、何が起こるかわからない。体調不良で予定通りにいかないこともある。でも、そんなときこそ、自分にとって本当に心に残る風景に出会えることもある。無理に元気を装わず、ただその場にいるという選択も、時には正解だと思いたい。
次回のための準備、備忘録

次に訪れるときは、きっとビール片手に乾杯できるように。そう思いながら、会場をあとにした。
【備忘録】
・ゲートではカバンのチェックがある。大きめのカバンは、荷物預かり所に預ける。
・会場は広い。歩きやすい靴がおすすめ。
・昼と夜で、雰囲気が異なる。どちらを楽しみたいか決めておく。
・空いている時間、安全安心を優先したい場合は、平日の午前から夕方がおすすめ。
・ブルワリーによってテントの混み方に差がある。
・有名なホフブロイは平日の昼間でも混んでいたが、座れないことはない。